ピアニストになりたい! 19世紀 もうひとつの音楽史

ピアニストになりたい! 19世紀 もうひとつの音楽史

, 岡田 暁生

によって 岡田 暁生
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内容紹介「これさえやれば誰でも弾ける!」ハノン、ツェルニーなどの膨大な数の教則本、指の強化器具、大人数を同時に教えるスパルタ音楽教室・・・・・。19世紀のピアニスト現象から読み解く、「ロマンの世紀」の驚くべき精神性「はじめに」より本書は、幾多の栄光に包まれながらも多分に胡散臭く、さらに言えば、いろいろと非人間的で抑圧的なものを孕んでもいる19世紀の「ピアニスト現象」を、とりわけ技術学習に焦点を当てて再検討し、ロマン派音楽のもう一つの顔を浮き上がらせようとするものである。・・・〔中略〕・・・19世紀ヨーロッパが生み出した音楽/イデオロギーは、今日なお私たちにとって無縁なものになりきってはいない。内容(「BOOK」データベースより)ハノン、ツェルニーなど膨大な数の教則本、指の強化器具、大人数を同時に教えるスパルタ音楽教室…19世紀のピアニスト現象から読み解く、「ロマンの世紀」の驚くべき精神性。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)岡田/暁生 1960年、京都生まれ。大阪大学文学部博士課程単位取得退学。ミュンヘン大学およびフライブルク大学で音楽学を学ぶ。現在、京都大学人文科学研究所准教授。文学博士。『“バラの騎士”の夢』(春秋社、1997年)でデビューし、『オペラの運命』(中公新書、2001年)でサントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2008年の本。著者は京都大学准教授(当時)。曰く・・・今日の聴衆の大半にとって、よい演奏の第一条件であるところの高度な(演奏)テクニックは、19世紀に入ってはじめて形づくられた規範であって、18世紀までの人びとにとってはさして価値をもつものではなかった。独奏ピアニストという職業が誕生したのは19世紀。モーツァルトの時代にはこの専門職はないも同然だった。モーツァルトやベートーヴェンのピアニストとしての活動は、作曲家としての彼らの仕事のほんの一部にすぎなかった。ピアノを弾く10本の指の表象として二つの理念型が考えられる。一方は「10本の指は不均等なのが当たり前」という考え方であり、力のムラや速度のムラは当然であって、そのムラからピアノ音楽ならではの運動の綾、うねりの感覚が生み出されるというもの。もう一方は、人間を機械にしたいという欲望であり、近代工業文明の傑作としてのピアノを弾きこなす者は、機械に比肩しうるような完璧な技術人たるべきというもの。薬指は他の4本と違って、中指および小指と腱でつながっているので、4の指(薬指)は独立して高く持ち上げることができない。指を均質化しようとする試みにおいて障害となったのがこの「独立しておらず弱い薬指」だった。19世紀には、この腱を切ってしまう手術をする医者もいた。19世紀の終わりになるとタイピストという職業が一般化する。たいして金儲けにもならないピアニストをめざすより、タイピストになった方が実質的。音楽がただの技術と成り果てたとき、生活の糧を得る手段として、ピアノはタイプライターの敵ではない。江戸時代までは身は保つものだと考えられてきたが、近代に至ってはじめて身体の鍛錬が強調され、それは運動によるものである、という考え方が一般化した、といわれる。近代人は「ありのまま」でいることに満足せず、何かに「なる」ことを目指す。身体が国家権力の精密な検査対象となり、より良い身体と健康は訓練によって育成される、つまり、「体育」という概念が一般化する。かくして生まれたのが「徴兵制と兵式体操」である。モーツァルトと違って、ハイドンやベートーヴェンは珠玉の旋律を大盤振る舞いしたりはしない。ベートーヴェンは、誰でも思いつきそうな、ほとんど凡庸といってもいい主題を「元手」として、飽くことなくそれを研磨し、組み合わせ、積み上げ、完成する。つまり、勤勉な労働(主題加工)を通して「大きな作品」という大資本を作り上げる。などなど。

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