地図で見るアラブ世界ハンドブック
本, マテュー ギデール
によって マテュー ギデール
3.7 5つ星のうち 3 人の読者
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内容紹介 アラブ世界は変化の渦の中にある。本書はカラフルな地図や表やグラフを豊富にもちいてアラブの「今」を描き、将来への見通しをさぐる。 全体は6章で構成され、見開きでひとつの項目。 巻末にはアラブ連盟22か国の面積や人口などといったデータ一覧も掲載。 【目次】 はじめにー「アラブの春」以後 アラブ諸国 過去と現在 ●アラブ諸国は運命共同体か ●中東とは何か ●アラブ人とイスラーム今日(7-8世紀) ●アラブ人の黄金時代(8-9世紀) ●アラブ帝国の崩壊(13-15世紀) ●オスマン帝国支配下のアラブ諸国(16-18世紀) ●アラブのルネサンス(19-20世紀) ●植民地化されるアラブ諸国(19-20世紀) ●独立するアラブ世界(20-21世紀) 権力と政治 ●国王と首長 ●大統領と形式的な共和国 ●ナショナリスト、バアス主義者、ナセル主義者 ●ムスリム同胞団、サラフィー主義者、ジハード主義者 ●進歩主義者、自由主義者、共同主義者 戦争と平和 ●テロジズムとの戦い ●領土・国境紛争 ●民俗間紛争 ●宗教・宗派間紛争 ●アラブ・イスラエル戦争 ●イスラエル・パレスチナ紛争 人々と社会 ●部族、民族、親族 ●ベルベル人、クルド人、アルメニア人 ●キリスト教徒、スンナ派、シーア派 ●難民と国内避難民 ●アラブ人の離散と移民 経済と発展 ●石油と天然ガス ●水とパン ●太陽と砂漠 ●ハラール・マネー 変革と革命 ●隣接する「モデル」 ●アラブ諸国の軍隊と治安機関 ●メディアとインターネット ●人間開発の課題 おわりにー民主主義への長い道のり 付録 アラブ連盟の22カ国 参考文献 索引 【著者略歴】 マテュー・ギデール(Mathieu Guidère) トゥールーズ第二大学教授兼研究部長。ソルボンヌ大学で言語学博士、アラビア語教授資格者となり、サン・シール陸軍士官学校常任教授、ジュネーヴ大学教授を歴任。イスラム研究家であり、地政学に精通するアラブ問題専門家でもある。『Sexe et charia(性とシャリーア)』(ロシェ出版、2014年)、『État du monde arabe(アラブ世界の情勢)』(ボエク社、2015年)、『Terreur. La nouvelle ère(恐怖――新たな時代)』(オトルマン社、2015年)など、数多くの著者がある。 内容(「BOOK」データベースより) 世界の地政学を一変させた「アラブの春」。国際社会の表舞台で、激しい変動を経験したアラブ世界を理解するために徹底分析!地図やグラフィックによる画期的地政学。 商品の説明をすべて表示する
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以下は、地図で見るアラブ世界ハンドブックに関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
原書房の「地図で見る○○」のシリーズに接するのは、この「アラブ世界」編で6冊目。非常に面白い1冊だが、イスラームやアラブ世界に関する予備知識を全く持たない読者には、ややハードルの高い書かもしれない。逆に、イスラームやアラブ世界に強い関心を持ち、これらがテーマの書籍に既に多く接している方には、興味深い内容が目白押しと思う。尚、本書でとりあげられている「アラブ諸国」は、アラブ連盟加盟の国・地域であり、それ故、モーリタニア、ソマリア、ジブチ、コモロといった、日本では「アラブ」と(多分)認識されていない国々の事も含まれている。このシリーズの他の巻同様に、本書もフランスの原著の翻訳もの。本書が非常に面白いと思えるポイントの筆頭は、著者がフランスという、かつてアラブ世界を支配し、今でも人的。文化的、経済的にアラブとの少なからぬ繋がりを持つ国の人である事。フランス(を含めた欧州)にとっては、アラブ世界は日本に比べてあらゆる点で「身近」な存在であるのだという、考えてみれば当然の事が再認識される部分に事欠かない。アラブ世界との歴史的な繋がりが非常に薄い日本人の読み手には、フランス人の書き手による「実感」のこもった生々しい記述が非常に刺激的で新鮮なものに感じられるのでは無かろうか。本書でとりあげられている事柄は、「歴史」「資源」の他、宗教・宗派・領土・国境等を巡る様々な争いなど、このエリアを語る上で不可欠、重要(そして日本人にはわかりづらい)なものばかり。各々の記事に添えられている地図も、非常に鋭い切り口でこれらの問題の「深層」を炙り出しているものが多くて、読みながら「なるほど」と頷かされる部分に事欠かない。ただ、その「地図による説明」が、必ずしも「現存のアラブ諸国の国境線」に沿ったものばかりでは無いので、この点もイスラームやアラブ世界に関する予備知識があまり無い読み手には戸惑いをもたらす可能性はある。「アラブ人とイスラーム教」についてとりあげた章に、中々興味深い記述がある。「厳密に言えば、今日アラブ世界にいるイスラーム教徒は、全世界のイスラーム教徒(13億人)の約4分の1にすぎないが、集合的イメージの中では特別な地位を占めている。実際、イスラーム教のあらゆる象徴(メッカ、メディナ、コーラン)はアラブ人とむすびついている。アラブ世界とイスラーム世界がしばしば混同される一因でもある。だが現実には『アラブ』と『イスラーム教』は分けて考えるべきである(後略/P.19)」この点は、アラブ世界を知る上で非常に重要なポイントであるのだが、多くの日本人はキチンと理解出来ていないと思われるポイントでもある。本書では、「アラブ世界=イスラーム世界」では決して無い事もこの地域を混迷させている要素の一つである事が、わかりやすく解説されており、その点も高く評価出来る。初心者向きとは言い難いが、知的興奮に満ちた優れた1冊としてお薦め出来る。
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